万引きから発見!前頭側頭型認知症(ピック病)

ピック病

ABOUTこの記事をかいた人

社会福祉士、介護支援専門員。認知症対応型通所介護で生活相談員をしており、副業で初任者研修講師をしています。福祉業界に携わり14年になります。地域の人々に正しく認知症を理解してもらう為、地域包括支援センター、高齢者見守りセンターのスタッフと協力して認知症サポーター養成講座の講師の活動も行っています。

前頭側頭型認知症(ピック病)とは

前頭側頭型認知症(ピック病)は脳の司令塔役の前頭葉と側頭葉が萎縮し、傷害されるため、我慢したり思いやりなどの社会性を失い「わが道を行く」行動をとる特徴があります。

 

ピック病の名前の由来は1892年チェコスロバキアの神経病理学者で精神医学学者の「アーノルド・ピック」にちなんで名づけられました。

 

ピック病は、大脳皮質にピック球と呼ばれる変性組織が発生する疾患で、指定難病に認定されています。

 

ピック球がなければ前頭葉が萎縮しても反射的な行動は少なく、しゃべりにくさや比較的早期からの尿失禁といった前頭葉の機能障害は出るものの、介護しやすい認知症と言えます。

 

また、多くの患者が64歳以下で発症する「若年性認知症」であることも大きな特徴です。

 

前頭側頭型認知症(ピック病)の症状

 

脱抑制がもたらすさまざまな症状

前頭葉は、脳の後方からくる外界や体内の情報に対する衝動的な対応を抑制し、理性的な振る舞いをしています。また、意欲や計画性をつかさどる場所です。そのため、前頭葉の機能が低下すると、さまざまな行動、心理症状が起こります。

 

①異食

指しゃぶりをしたり、食べられないものを口にする「異食」が多くなります。デイサービスの利用者さんで異食がある人は折り紙やレゴブロックなど、色がついてるものを口に入れてしまう傾向があるので注意をしています。

 

② 感情面が不自然になる

怒りっぽい、無愛想、しゃべらない、能面のような無表情、楽しい場面でないのに意思に反して笑う(強制笑い)などの感情面が不自然になります。

 

③常同行動

徘徊ではなく、同じ経路を歩く「周徊」をします。また、同じ字を書き続ける、手で膝をこすり続けるなど同じ動作を繰り返す「常同行動」がでます。

デイサービスに来所しているピック病の利用者さんは、ジグソーパズルが気に入って昼食を食べる以外の時間はずっとジグソーパズルをしています。

 

④衝動的な食行動

甘いものばかり食べる、他人のおかずを盗る、窒息しそうなほど食べ物を口の中にかき込んだり丸飲みするなど、幼い衝動的な食行動をとります。

 

⑤言語の理解が低下する

何かを言われても言葉の意味がわからず、「どういうこと」と問い返してきます。「鼻をつまんで」と言うと鼻を押すなど、言語の理解が低下します。

 

⑤尿失禁が多くなる

これは多くの認知症に見られる症状ですが、ピック病の場合は、子どもの発達を逆にたどるようにオムツに戻る感じです。

 

⑥万引き

万引きもピック病特有の症状です。中年から初老期にかけての分別盛りの時期に万引きをした人の何割かはピック病と考えて良いでしょう。

 

前頭側頭型認知症(ピック病)のケアのポイント

ピック病の患者はとても大変だと言われます。抑制がきかず、自分の欲望のおもむくままに行動するので、介護の初心者では制御不能な状態に陥り、家族や介護職は戸惑ってしまうのです。

 

よく、ピック病の症状は暴力だと言われていますが、それは本人の常同行動や日課的生活習慣を妨害しているからです。楽しみを言葉や力で断念させるのは慎みましょう。

 

私も昔、ピック病の利用者さんがパズルに集中しているにもかかわらず、昼食だから無理に止めさせようとしたら、思いっきり殴られた経験があります。ピック病の人は50〜60歳代なので、力が強く大怪我に繋がる可能性があります。

 

行動・心理症状を応用したケアをする

①デイサービスで入浴を

身だしなみに構わなくなり、重度化すると入浴拒否が出る。早期の段階からデイサービスやデイケアに通い、週2回の入浴習慣づけておくとよい

 

②行動パターンを先取りする

集団行動が困難になる「立ち去り行動」が出たら、普段から興味があるものを用意しておいて関心を引く。言葉や腕ずくでの静止は逆効果

 

③なじみの関係をつくる

初期の段階では短期記憶が保たれているので、通所施設や介護職となじみの関係をつくっておきたい。相性がいい人に担当してもらうこと

 

④できることを繰り返す

体を動かす運動、道具の操作、空間把握、知覚に訴える遊びが得意。絵画、パズル、編み物、写真撮影などをしてもらうと落ち着くことがある

 

⑤新しい常道行動を作る

同一行動を繰り返す「常同行動」が顕著になる。毎日同じ時間に同じことをする習性を用い、(嫌がらない内容で)好ましい生活習慣をつくるとよい

 

⑥言語能力を維持させる

重度化すると、言葉の意味がわからなくなる。脳卒中による失語症で失った言葉を取り戻すような訓練ではなく、現状を維持する訓練を心がけたい

 

⑦生活習慣を妨害しない

いつもの時間にいつも自分が座るソファーが他の人に占拠されたときなど、混乱して暴れることがある。介護者が気を配らなければならない

 

⑧接触低下には根気よく対応する

異常に食べる時期もあるが、やがて意欲が低下して介助しても食べなくなる。病院や施設の専門家の力を借りて、食べる力を取り戻してもらう必要がある

 

 

 

この動画を要約すると

 

この動画に出てくるピック病の中村さんは「茅ヶ崎市役所文化推進課長」として働いていました。56歳の時にある奇妙なことが起こりました。

 

市役所に出勤する立ち寄ったスーパーで突然警備員にチョコレートのお金を払っていない呼び止められ、中村さんは「払った」と言ってトラブルになりました。

 

なんで、自分が万引き犯にされるのかまったく身に覚えがなく、「きちんと話せばわかってくれる」思っていたそうです。

 

中村さんは閑散としていた茅ヶ崎海水浴場を「サザンビーチちがさき」に名前を変えた他、「サザンビーチちがさき」でサザンオールスターズのライブを実現させるなど茅ヶ崎市役所で数々の実績を残していました

 

 

万引きの逮捕からわずか2週間で茅ヶ崎市は中村さんに懲戒免職処分を伝えました。疑いは起訴猶予処分となりましたが、長年勤めた職場を失いました。

 

実はこの時ピック病を発症していて、無意識にチョコレートを棚から盗っていたとの事です。

 

認知症とは中村さん、家族も予想も想像もしていなく、最初の2、3年ぐらいまでは引きこもりの状態が続いていましたが、若い時からの趣味の写真が立ち直るきっかけとなりました。

 

動画の中で、雪の中、一眼レフで風景を撮り続ける姿が見られます。

 

また、中村さんは「認知症でも自分らしく」生きてもらうための講演会招かれたり、自身が執筆した『ぼくが前を向いて歩く理由』は若年性認知症の患者やその家族を勇気付ける本として話題となりました。

 

「認知症になっても自分らしく生活したい」講演会の中で

 

「初期の段階や若い認知症の人はできることがいっぱいある、残っている能力は集中するので、その能力を生かせることがある」「認知症になっても残った能力を生かして楽しむことができる」

 

また、中村さんは若い頃から趣味を持つことの大切さを語っています。

 

「私は写真が好きだったから、認知症になっても写真が楽しめる。趣味を持っていない人は認知症にあると進んでしまう」

 

私が一番印象に残っている言葉は

 

「全国を回る中で新しい人間関係がたくさんできる。失ったものより認知症になって得られたことの方が多い。認知症で多少の不自由があっても不幸ではないという思いになる。」

 

と語った言葉でした。

 

最後に中村さんは「家族や地域の支える人たちの社会環境が整えば、認知症になってからどうではなく、かえって楽しみは持てると思う。前向きに生きられるようになっている。」と語っていました。

 

 

認知症の人達が幸せな人生を送ることができるように

アライレオのプロフィールで書いた、万引きをした若年性認知症の利用者さんもピック病を患っていました。

 

この利用者さんは普通にコミュニケーションをとる事は難しかったですが、身体的な問題はなかったので他にもできることは沢山ありました。

 

商店街に行くのが「常同行動」になっており、習慣化されていました。

 

万引きをきっかけに、利用者さんの行動の制限をさせたくなかったので、商店街の人達に「もし、品物を持ち去ってしまったら、連絡して下さい」とお願いしました。

 

利用者さんのご家族の方にも、その旨を伝え、今後は先払いにしてもらう事になりました。

 

多くの人達が認知症について正しい知識を身につけなければ、認知症になっても安心して暮らせる地域を作れるはずです。

 

4月11日 一部内容を変更しました。 

 

参考文献

もっと詳しく前頭側頭型認知症(ピック病)を知りたい方はこちらの文献を参考にして下さい。

より詳しい専門書にはない、読みやすさがあります。イラストも多数あり、症例に沿った説明も分かりやすいです。認知症の最初の本としておすすめです。

 


完全図解 新しい認知症ケア 医療編 (介護ライブラリー)

 

アライ レオ
これからも認知症の人たちが幸せに人生を送るにはどうしたら良いか考えていきたいと思います。

 

フォロワーさんお薦めの本

朝日新聞の書評欄に載った作品です。主人公80歳のベテラン作家「幸田まり子」さんをとりまく、超高齢化社会の問題を面白く、切実に描かれています。家族問題や孤独死といったテーマもありますが、凛として前向きに生きていくまり子さんの姿を見て感動し、元気をもらうことができると思います。

 

まり子さんの生き方は、いずれ来る自分の未来に重ねて見てしまうので、続きを買わずにはいられなくなります(笑)

 


傘寿まり子

 

ピック病



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