
レビー小体型認知症とは
「レビー小体型認知症」という言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症の次に多く全体の15%を占めています。
「レビー小体」とは、神経細胞に出来る特殊なたんぱく質です。レビー小体がたくさん集まっている場所では、神経細胞が壊れて減少している為、神経を上手く伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。
この「レビー小体」が脳幹(生命維持を担う場所)にたまるとパーキンソン病を発症します。このレビー小体が脳幹だけでなく、大脳皮質全体に出現したのが「レビー小体型認知症」です。
「レビー小体型認知症」は他の認知症では見られない後頭葉(視覚をつかさどる場所)の血流も低下するので、しばしば幻視が見られます。
パーキンソン病の4大症状

「レビー小体型認知症」はパーキンソン病を伴うので、パーキンソン病についても少し触れておきます。
パーキンソン病には4つの大きな症状があります。
① 筋強剛
筋肉がこわばること(固縮)によって、関節の抵抗が大きくなる症状が出ます。
②安静時振戦
振戦とは、手足をふるえる現象です。これがじっとしている時も出ます。
③動作緩慢
徐々に体の動きが乏しくなり、動けなくなったりします。
④姿勢反射障害
バランスをとる動作が苦手になり、制御できない反射的な動きが出てきます。
診断と治療が難しい認知症
「レビー小体型認知症」の3大症状は、①認知症(幻視など)②パーキンソン症状 ③うつ状態です。しかし、最初から3つ揃っているわけではありません。数年間はパーキンソン症状しか現れず、やがて認知症の低下が加わるタイプがあります。また、逆のタイプもあるのです。
そのため、よくパーキンソン病やアルツハイマー型認知症と誤診されたり、うつ病と誤診されるケースも少なくありません。
また、薬剤過敏性があるので、誤った診断で治療薬を飲むと症状が悪化してしまいます。しかし、要点をつかめば素人でも発見は可能です。
レビー小体型認知症に見られる傾向
①真面目な男性に多い
パーキンソン病もレビー小体型認知症も、遊びを知らないまじめなタイプに多い、男女比は男性が優位。初老期の発症は少なく、高齢者が発症する。
②薬を飲んで吐いた
認知症の治療薬やパーキンソン病治療薬が吐き気で飲めない。または歩けないほど薬が効いてしまう。
③状態の変動が激しい
認知機能が数日単位で変化する。または日内変動して、朝と夕方で別人のように状態が変わる。
④脳の萎縮は少ない
アルツハイマー型認知症に比べて、脳の萎縮が少ない。
⑤幻視、パーキンソン病、認知症のどれかがある。
特に幻視は、レビー小体型認知症の決め手となる。
⑥姿勢が傾いている
やや猫背。体幹は左右どちらかへの傾斜が多く、すり足で歩き転倒が多い。
⑦昼間によく眠る
日中1時間以上眠ることがあり、診察中でも眠る。表情はうつろで、元気がない。
⑧寝言で叫ぶ
夢に体が反応してしまう。そのため大声で寝言を言ったり、横に寝ている人を叩いたりする。
では、実際に動画で「レビー小体型認知症」の症状を見てみましょう。
この動画に出てくるレビー小体型認知症の吉田さんは幻視、パーキンソン症状、認知症の症状が見られたのを確認できたでしょうか?
初めて、レビー小体型認知症の人を見られた方は吉田さんが幻視が見える姿を見て、驚かれた方もいると思います。
私が勤務しているデイサービスにもレビー小体型認知症の利用者さんがいます。私はこの動画で吉田さんが流暢に英語を話している姿を見て、ある事がひらめきました。
レビー小体型認知症の利用者さんの自宅に訪問した時に部屋にビートルズのポスターが貼ってあるのを見かけました。若い頃大好きで、よくレコードで聴いていたとの事でした。
その事を思い出して、自宅にあったビートルズのCDを持って行き、デイサービスで流してみました。すると「Help, I need somebody、Help, not just anybody、Help, you know I need someone, help」と流暢に英語で歌いながら踊り出しました。
昔の記憶が戻った瞬間でした!
普段は会話もままならないのに、流暢に英語で歌っている姿を見て、スタッフも驚いていました。
幻視が見られた時の対応
不安を取り除いてあげましょう
デイサービスの昼食で「そぼろご飯」が出ることがありました。レビー小体型認知症の利用者さんは「ご飯に虫が入っている」と怒りながら訴えていました。
新人スタッフは「虫は入ってませんよ」と説得していましたが、その利用者さんは怒りが治らないようすでした。私はすぐに「白米に変えてみて」と指示し、白米を出すと落ち着かれ、美味しそうに白米を召し上がっていました。
レビー小体型認知症の利用者さんは「そぼろが虫に見えた」のでしょう。
白米にすることによって、不安を取り除くことができたので、気持ちも落ち着いたようでした。訴えを良く聞いてあげて、何が不安なのかを理解して解決策を考えることが重要です。
参考文献
もっと詳しくレビー小体型認知症を知りたい方はこちらの文献を参考にしてください。
より詳しい専門書にはない、読みやすさがあります。イラストも多数あり、症例に沿った説明も分かりやすいです。認知症の最初の本としておすすめです。

フォロワーさんお薦めの本
朝日新聞の書評欄に載った作品です。主人公80歳のベテラン作家「幸田まり子」さんをとりまく、超高齢化社会の問題を面白く、切実に描かれています。家族問題や孤独死といったテーマもありますが、凛として前向きに生きていくまり子さんの姿を見て感動し、元気をもらうことができると思います。
まり子さんの生き方は、いずれ来る自分の未来に重ねて見てしまうので、続きを買わずにはいられなくなります(笑)